ペット栄養管理士とは、獣医師のもとで犬猫がなりやすい病気の症状や原因、闘病中の栄養管理、フードの原材料の性質などを学び、犬猫の健康増進を行います。
獣医師学会の1つ、日本ペット栄養学会から認定されているため民間資格の中でも専門性の高い資格で、現役の獣医師から直接学べるという点が魅力の一つです。
ペット栄養管理士はなにを学ぶのか、なるためにはどうしたらよいのかを解説していきます。
実際に私が試験を受けてみた感想や取得して感じたメリット・デメリット、将来性などもまとめていますので、ペット栄養管理士を取得しようか迷っている方はぜひチェックしてみてください。
この記事の著者
- ペット栄養管理士
- 犬の管理栄養士
- 上級食育アドバイザー
- 日本ペット栄養学会正会員
- Bowls Fresh Dog Food 開発チーム
- 手作りごはん歴7年
- 食品衛生管理者
くわしいプロフィール
自身と暮らしているチワワがフードを食べなくなったことがきっかけで、手作りごはんに興味を持つ。
日々実感する手づくりご飯の魅力を伝えるべく、犬のごはん作りに関するブログ「チワワごはん」を開設。
ブログ運営の傍ら、犬の食事相談や栄養指導に励み、指導数は100匹以上にのぼる。
現在は、企業とのレシピ開発やコンサルにも力を注いでいる。
ブログ月間1.5万PV以上、インスタグラムのフォロワーは3.6万人ほど。著書「栄養満点なチワワごはんの作り方」
ペット栄養管理士とは、「犬猫の栄養学」が学べる資格
学習内容
- おもに犬猫の栄養学の基本から応用
- ドッグフードの原料の詳細・加工法
- 病気の原因、治療方法、栄養管理
\いいところ/
- 現役の獣医師による講習会のため、現場だからことわかる情報も知れて、実際の生活で役立つ
- 動画による症例紹介やレントゲン写真をみながら病気の解説などここでしか学べない情報が多い
- 犬猫の歴史や栄養学の基本、デンタルケア、感染症対策と幅広く学べる
- 内容の濃さと量に比べて費用がお手頃
\残念に感じたところ/
- 通学が必要なため、東京から遠い方は時間と交通費がかかる(コロナのためリモート参加が可能。2022.10.17現在)
- 講習会や試験日のスケジュールが決まっており、都合を合わせる必要がある
動物看護士や獣医師の方が栄養学について理解を深めるために取得する資格でもあるほど、犬猫の栄養学の専門性の高さが特徴の資格です。
実際に取得してみて、講習会の内容の濃さに驚きました。
たとえば、腎臓の機能が低下している時に血液検査で見られる変化、症状に合わせた栄養管理、症状別のタブーな食事療法など。
私がこれまでに読んだ、犬猫の栄養学に関する本には載ってない情報がたくさん知れて、不安が安心に変わり、自信がつきました。
\おすすめの人/
- 犬猫の栄養学をしっかり学びたい
- 専門性の高い栄養学を学びたい
- 栄養学だけでなく、アレルギーや病気に関することも学びたい
- 教科書的な情報ではなく、実際に犬猫に起きている症状や傾向も知りたい
\向いていないかもしれない人/
- 自分の好きなタイミングで学びたい
- あまり時間がかからない資格がいい
取得まで最短でも1年必要なカリキュラムに加えて通学受験のため、いますぐに学びたい!資格を取得したい!と思っている方には向いていません。(コロナ対策のためリモートでの受験が可能です2022.10.18現在)
ペット栄養管理士は、濃く幅広い内容が知れる分、難しさを感じることもありましたが、犬猫の栄養学や病気、体調管理について本気で学びたいと思っている方は満足できる内容だと感じました。
ペット栄養管理士になるには、2つのルートがある
ペット栄養管理士は、誰でも取得可能です獣医学が、獣医学系の学校を卒業した人とそうでない場合ではルートが変わります。
自身がどちらに当てはまるのかを確認し、必要な手順について把握しておきましょう。
1.獣医学を学んでいない一般の方の挑戦の場合
獣医学部のある大学や専門学校に通っていない人や、犬猫に関する資格を持っていない人でも、ペット栄養管理になることができます。
その場合、「ペット栄養管理士養成講習会」と呼ばれる勉強会に参加する必要があり、講習会に参加後、ペット栄養管理士の受験チャンスが与えられます。
講習会は全部で講習会AからCまで3つあり、3つの講習会に参加すると、ペット栄養管理士の試験に受験できるようになります。
Aでは栄養管理を中心に、Bは病気についてなど参加する講習会によって内容が違います。
\実際の講習会スケジュール/
1~2月/A教程
5~6月/B教程
9~10月/C教程
↓
3つの講習会に参加すると、認定試験が受けられる!
もし、5月から講習会に参加したとすると、5月のB教程、10月のC教程、来年の2月のA教程という流れになります。
すべての講習会に参加し、受験資格を得るには最短でも1年はかかります。
3つの養成講習会参加後、年1回の試験で合格するとペット栄養管理士に
養成講習会をすべて受けると、12月のぺット栄養管理士になるための試験を受けることができます。
\試験までのだいたいの流れ/
1~2月/A教程
5~6月/B教程
9~10月/C教程
3つの講習会に参加する
↓
12月/認定試験
合格すると、ペット栄養管理士に!
試験に合格し、日本ペット栄養学会に登録を行うと、晴れてペット栄養管理士となります。
試験に落ちた場合は、来年の認定試験にチャレンジ可能です。もう一度3つの講習会に参加する必要はありません。
2.大学で獣医学を学んだ人や犬猫の専門学校を卒業した人
大学で獣医学や畜産学、農芸化学を学んだ人や日本ペット栄養学会が認定した動物専門学校を卒業した人は、3年次または卒業時に受験資格を得ることができます。
養成講習会に参加せずに年に1回の試験に挑戦でき、試験合格後、ペット栄養管理士になることができます。
養成講習会をパスした人の独学での勉強方法
受験資格は持っているものの、テキストを買ったが講習会を受けていないからまったく理解できない。という方も多いはず。
養成講習会に参加しなくても、受験資格を持つほど知識がある方なら、テキストと問題集があれば合格は可能だと感じました。
私が受験したときの認定試験は過去問から出ている問題がほとんどで、見たことある!という問題がかなり多かったからです。
テキストは参考程度に読み、過去問を最低でも3週し、正解率が80%を超えれば合格できると思います。
過去の問題集
日本ペット栄養学会の公式から6,000円(送料別)で購入可能です。
テキスト
日本ペット栄養学会の公式サイトは、講習会参加者のみテキスト販売しており、講習会をパスした方はAmazonの日本ペット栄養学会公式から購入できます。
ペット栄養管理士の就職先や給料について
就職先はペットショップや動物保護施設、ペットホテル、ブリーディング施設のなどがありますが、求人はかなり少ないです。
ペット栄養管理士として就職するのは難しく、知識を深めるために取るといった方向性が強い資格です。
ペット栄養管理士の合格者一覧を見てみると、動物看護士や獣医学生が知識を補うためにという方がほとんどです。
求人を見た限り、年収は月200万円程度だと考えられます。
ペット栄養管理士の仕事内容
仕事内容は栄養学を活かし、犬猫のお世話やペット用食品の記事の監修などを行います。
私が取得したほかの民間資格と比べると内容が濃く、より専門的な情報を提供できるため、独立や副業面では強い力を発揮できると感じています。
たとえば、犬の血液検査結果をみて臓器のどこに異常がでておりなにが起きているのかがわかるといった、獣医師や動物看護士に近い視点での飼い主さんへのアドバイスなど。
ペット栄養管理士となり手作り食の本を出版している人や、ドッグフードのレシピ開発をし販売している人など、あたらしい働き方に適した資格です。
ペット栄養管理士とペットフーディストの違い
内容 | 基礎栄養学 臨床栄養学 衛生学 ドッグフード学 | 栄養学 療法食 漢方食 |
学習内容 | 通学 現在は通信可 | 通信 |
食事内容 | フードのみ | 手作り食がメイン |
講師 | 獣医師 | 獣医師や動物看護師など |
病気への考え方 | お薬や手術などを使う 西洋医学 | 漢方やハーブを使う 東洋医学 |
取得後サポート | なし | あり |
取得までの費用 | 53,500円 | 55,000円 |
ペット栄養管理士とペットフーディスト養成講座の一番の違いは「食事や治療法への考え方」です。
外からのアプローチで病気の治療や健康増進を狙うペット栄養管理士に対して、ペットフーディスト養成講座では、内側からアプローチし、犬猫自身の免疫力を高める方法を中心に健康増進を考えます。
どちらの資格も取得することでより犬猫の食事や栄養管理がしやすくなり、自信が持てるようになるので、取得後の満足度はどちらも高いです。
ペット栄養管理士とペットフーディストの仕事内容の違い
ペットフーディスト養成講座は、犬猫の食事へ特化した仕事に役に立ちます。
どちらかというと就職に有利な資格ではありませんが、資格取得者のみが働ける場所を用意しています。
「ごはんの窓口」と呼ばれるドッグフード専門店で、飼い主のフード選びのお手伝いや手作り食へのアドバイスを行う職場で働くことができます。ペット用品の販売のサポートや独立支援なども行っています。
手作り食の知識を深めるために取得し、料理教室や手作り食の販売などを行っている飼い主さんが多いようです。
ペット栄養管理士試験の合格率
帝京科学大学によると、受験者の約80%は合格するそうです。
40~50代の受講者がもっとも多く、積極的に質問をする人の多さや授業後に獣医師へ直接質疑応答している様子をみて、受講者の意識が高さを感じました。
ペット栄養管理士試験の勉強方法
100問のマークシート式で試験時間が2時間と余裕があるため、落ち着いて解くことができます。
私が実際に行った勉強方法は、養成講習会で「ここでるよ!」と言われた部分をとくに覚えました。
養成講習会で習ったことをすべて終えた後、日本ペット栄養学会の公式サイトから過去問題集を購入し、試験日当日までに過去問を4週ほどしました。
病気ごとの栄養管理に関する問題は、間違えやすい答えが用意されており、どっちだたったけ…となる事が多かったので、あやふやに覚えず、しっかり覚えておいたほうがよいと感じました。
ペット栄養管理士の取得後のメリット・デメリット
メリットは犬猫の病気への理解が深まったことです。
犬猫の病気のことをまったく知らなかった取得前と比べると、この症状は病気なのか、どの病気に近いのかなどが理解でき、獣医師や動物看護師と同じ視点から犬猫の健康を考えられるようになりました。
自分なりに心臓の音を聞き、歯茎や歯垢をチェックし、耳の中をニオイするなど、かんたんな健康診断ができるようになったのも大きなメリットだと感じています。
「愛犬を病気から守るのは獣医師ではなく、飼い主さん」という養成講習会中の獣医師の言葉の意味が、最近になり、こういうことか…と実感している日々です。
取得後に感じているデメリットはありません。
健康チェックよろしくモナ~
さいごに:犬猫の栄養学や専門知識を深く学びたい人におすすめ
資格取得までに50,000円ほどかかりましたが、得た知識に比べて、値段が良心的すぎると感じました。
学ぶことが好きな私は民間資格のボリュームに物足りなさを感じてしまうのですが、ペット栄養管理士は深く、広く学ぶことができ、とても満足できました。
フード原材料のとうもろこしの品種別消火スピードや甘さの違い、肝臓病の種類の見分け方と時期に合わせたこまかい栄養管理法など。
学ぶことが好きな方や犬猫が大好きな方にとっては満足度の高い資格なので、気になった方はペット栄養管理士の公式サイトをチェックしてみてはいかがでしょうか。
あとがき
私がはじめて講習会に参加したとき、内容の深さと費用のお手頃さに、いい資格を見つけた!これはほかの飼い主さんにも紹介したい!と思いました。
また、私のプロフィールをみた飼い主さんが「ペット栄養管理士が気になっています。どんな感じですか?」との質問が多かったことから、記事を作成しました。
この記事がペット栄養管理士に興味を持った方のお役に立てればうれしく思います。
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